狐娘「妾は老いることも死ぬこともないケモノじゃ」
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70: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2021/05/20(木) 01:15:43.22 ID:0sLGfUdN0
狐娘「言うまでもなかろうが、母体には妾が選ばれた。当時、最も容姿の整った個体を選出したらしい。…とはいえ、妾はまだ生まれて十年かそこらじゃったがな」ククッ
狐娘「儀が無事に終わり、皆が安堵しきった日の夜じゃった」
狐娘「人間が襲ってきた。どうやら儀を終え、女王となる個体が出来上がるのを待っていたらしい」
狐娘「我らがいくら人智を超えた力を有するとはいえ、戦ごとに長けているわけではない。村には火が放たれ、同胞は次々と殺されていった」
狐娘「奴らの目的は妾のみ。他はどうなっても構わぬ、と叫んでおったな」
狐娘「だが皮肉にも、妾を救ってくれたのも人間じゃった。最早声も思い出せぬが、一人の若者に手を引かれたのを覚えておる。奴が居なければ妾は今でも人類の良き研究材料になっていたかもな」
狐娘「…それからは一人で生きてきた。身体は生殖に適した大きさで成長が止まり、役目を失った女王が一匹完成したわけじゃ」
狐娘「ところがどこから噂を嗅ぎつけたのやら、妾の元へ来る人間が絶えなくての。不老不死にあやかろうとする者、呪(まじな)いの力をあてにする者……そして、そういった輩に贄として差し出される幼子等々」
狐娘「きりがないのでな、こうして人除けの呪いで以って、静かに暮らしておった」
狐娘「…これでつまらん身の上話はしまいじゃ」
男「………」
狐娘「………」
男(……)
男「ごめんなさい」
狐娘「何故謝る」
男「あなたがそうなってしまったのも、何年も辛い生活を続けてきたのも、全部人が原因なんですよね」
男「だから同じ人として、ごめんなさい」
狐娘「お主が謝るでない。全ての人間が残忍なわけではないことは知っておる」
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