狐娘「妾は老いることも死ぬこともないケモノじゃ」
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69: ◆YBa9bwlj/c[saga]
2021/05/20(木) 01:14:54.70 ID:0sLGfUdN0
ーーー神社 本殿内ーーー

狐娘「ここに他者を招き入れるのは初めてでな、もてなしなぞ出来ぬが、まぁ適当に座ってくれ」

男(…中は普通の神社だ。いや、神社なんてそうそう入ったことないんだけど特別目立ったものもないし。とはいっても、これはあまりに…)

男「何もない…」

狐娘「ただの寝床じゃからな。物は必要ない」

狐娘「さて」

男「……」

狐娘「…そう身構えるな。ただの昔話じゃ」

狐娘「お主、妾の歳を尋ねたろう?生憎、それだけは教えられん」

狐娘「何しろ覚えていないからの」ククッ

男「覚えてない……忘れちゃうくらい前から生きてるから、ですか?」

狐娘「察しが良いの。まだ人間が歌詠みに興じていた時代じゃよ」

狐娘「ざっと千年ほど遡るかの」

狐娘「かつて世界には、人間以外の種族も広く存在しておった。人ならざる容姿、力を持つ者、あるいは妾のように人に近い姿をしている者。今日妖怪や伝承といった形で語り継がれているのはその一部じゃ」

狐娘「妾の一族とて幾つもの集落を抱え、静かに暮らしていた。ささやかながら異種族同士の交流もあった。無論、人間ともな」

狐娘「しかしいつの頃からか、人間は人間以外の種を"ケモノ"と呼び、迫害するようになっていった。当然彼らも抵抗したが、人間はその驚異的な数と繁殖力で次々と異種族を根絶やしにしていき…遂に妾達も根絶の危機に追い込まれた」

狐娘「そこで、女王の儀を執り行うことにしたのじゃ」

男「女王…?」

狐娘「あぁ」

狐娘「分からぬか?」

男「え?」

狐娘「女王の儀とは文字通り女王を創りあげる儀式じゃよ。女王蜂は知っておるな?それと同じじゃ」

男「……! そ、それって」

狐娘「若い雌を不変の肉体に変え、子を産み続ける個体として据え置く。朽ちることのない苗床と言うたところか」

男(なんだよ、それ。子供を産むだけの機械にするってこと……そんなものを、狐娘さんが)

狐娘「勘違いするでないぞ。女王となるのはこの上ない名誉なのじゃ。姿形だけでない、主ら人間とは思想も価値観も異なる」

男「それでも、僕は間違ってると思います。そんな一人の意思を潰すような真似…」

狐娘「…主ならそう言うじゃろうな」



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