【シャニマス 】果穂(16)「普通って、なんですか?」
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28:名無しNIPPER
2021/05/15(土) 23:21:06.14 ID:yf00dqmI0
 台本はあるにはあるけど、途中の会話は基本的にアドリブで任されている。

「地元はどこでしたっけ?」
 鳥取だったと思う。
「鳥取で……こざいます」
以下略 AAS



29:名無しNIPPER
2021/05/16(日) 17:43:47.21 ID:vxf1UNaL0
 顎に汗が垂れる。ぼーっとその感覚を楽しんでいると、揺れた汗は地面に落ちて、一滴のシミを作った。
 河原の砂利に汗が吸い込まれていくのを見て、暑いですね、と呟く。耳鳴りのように響く蝉の声は不快ではなかったけど、背中に張り付く汗の感覚はないほうが気持ちいいだろうな、と思った。

「ほんと、昼間だと河原でも暑いですね。一旦車に避難しましょうか」

以下略 AAS



30:名無しNIPPER
2021/05/16(日) 17:44:14.90 ID:vxf1UNaL0
 最初のレジャーは魚釣りだった。
 入り組んだ渓谷の中でも流れが穏やかなところがあって、そこは木が屋根になっているので1日中魚釣りができるスポットということだった。

「凛世さん、ミミズつけてあげましょうか?」
「いえ……苦手ではありませんので……この程度は……」
以下略 AAS



31:名無しNIPPER
2021/05/16(日) 17:44:54.80 ID:vxf1UNaL0
 台本はあるにはあるけど、会話の中身は基本的にアドリブで任されている。

「地元はどこでしたっけ?」

 中四国地方だったと思う。
以下略 AAS



32:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:40:54.32 ID:/6+K4mbv0
 その当たり前を持ち続けて欲しい、と言われたことがある。誰に言われたのかは覚えてないけど、頭に強く残っていて、さっき夢の中でそれを思い出した。

 時計を見ると深夜2時。夜中に目が覚めて、無性にお腹が空いたので旅館に備え付けてあった冷蔵庫を開けてみると、冷凍スペースにアイスが入っていた。2個入りの、だいふくのアイス。夕方スタッフさん達と別れる時に、お風呂上がりにでもどうぞと差し入れで貰ったものだ。
 減量中だったらどうするつもりだったんだろう。
 昼間はあれからいくつか川や山でレジャーを撮影して、夜は旅館でご馳走を食べさせてもらった。VTRで使う時は、芸人さんたちが現地でゲテモノを食べている映像を流しながら、ワイプであたしたちが美味しいものを食べる映像を流すらしい。
以下略 AAS



33:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:41:25.48 ID:/6+K4mbv0
 広縁に座って、少しだけ窓の障子を開けてみる。月明かりが思ったより眩しくて、すぐにパタンと閉じた。丸い木のテーブルにアイスを置く。すぐ食べたら硬いから、しばらく置いておこう。
 最近食欲が無性に湧いてくる。お母さんからは成長期ね、と言われて納得したけど、プロデューサーさんに同じことを言われるとちょっともやもやした。そういうことを女の子に向かって言わなくたって。
 昔はちょこ先輩がやたらご飯を食べることに驚いていたけど、今だとなんとなくわかる。身体が大きくなるのにご飯が必要だって、おなかが言っている。毎日こんな時間に食べたらダメかもだけど、眠れない夜くらい、ちょっと悪さをしたってバチは当たらない。

「……眠れないのですか?」
以下略 AAS



34:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:41:58.43 ID:/6+K4mbv0
 やっぱり凛世さんは和服が似合う。旅館のパジャマのことを正確になんて呼ぶのかは知らないけど、寝起きなのにきっちりと浴衣を見に纏った凛世さんは、昼間よりも馴染み深くて、ちょっぴり子供に思えた。
 初めて出会った頃の凛世さんより、あたしはもう大人なんだと思うと、ちょっと変な気分になる。今の自分が、記憶の中の凛世さんより大人びているイメージがわからない。それとも、記憶にもやがかかっているだけで、実際の凛世さんはもっと子供だったのかもしれない。
 その凛世さんが、おもむろに折り紙を机の上に置き、丁寧に折り目をつけはじめた。

「なんですか、それ」
以下略 AAS



35:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:42:26.33 ID:/6+K4mbv0
「アイス、一個食べますか?」
「いえ……先程いただきましたので……」
「じゃあ食べちゃいます、内緒ですよ」
「ふふ……このような時間に……」

以下略 AAS



36:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:42:56.31 ID:/6+K4mbv0
 すぐに飲み込むのは大きいし、急いで噛むと歯の奥がキーンとしたので、頭を縦にブンブンと振って答える。
 凛世さんがふふふと笑う。なんで口に入れた途端に質問してくるんですか。

「ま、まだ、決まってはないんですけどね」

以下略 AAS



37:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:43:44.07 ID:/6+K4mbv0
 落ち着いた声音で、凛世さんがゆっくり喋る。この人は放クラや事務所のみんなの前だと、言葉を選ぶように間を開けて喋ることが多い。けれど、みんな自然とそのあと言葉が続くのかそうでないのか、わかっていた。
 凛世さんの言葉を遮ってしまうことは、あまりないと思う。

「そもそも……自分が変わっている、ということは……承知のつもりです」

以下略 AAS



38:名無しNIPPER
2021/05/17(月) 17:44:27.02 ID:/6+K4mbv0
 凛世さんは元から特別だ。それは自他ともに認められていることだし、凛世さんはそれを武器にしている。
 気にしている様子もあるけど、それを受け入れてもらえてるし、現に今日もその凛世さんの「特別」が撮りたくて、お仕事ももらっている。あたしは凛世さんの隣にいただけだ。
 凛世さんと比べたら、自分はなんて普通なんだろう。さっきまで自分が特別で、普通のことを何も知れないなんて傲慢なことを考えていたけど、案外自分みたいな人間は、特別でもなんでもないのかもしれない。
 特別であることを自覚すること、普通であると言い聞かせること、どっちが正しいのだろう。
 凛世さんがすっと障子を開く。暗い広縁に、薄青い月明かりが差し込んだ。
以下略 AAS



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