底辺映画監督唯一の名作 〜そしてそれに連なる窮屈で退屈な続編達〜
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4:名無しNIPPER[saga]
2021/05/03(月) 21:09:17.50 ID:U1gqLcRo0


 だが、黒澤は止まることを知らなかった。飽くなき探求心で、己の映画がどうすればよい映画となるのかを模索し続けた。観客など知らぬ、売れ行きなど知らぬ、ただ一人でいい。俺の作る物語で、心の針を飛ばしてやると。 

 黒澤は、性根がねじ曲がり、何をするにも不器用で、ただ前に進むしかないと宣いつつ右斜め後方に這いずるような男であるが、ただ一点だけ人より秀でていることがあった。それは、女運の良さである。

 生まれ持った端正な顔立ちと、どこか憂いをもった影のミスマッチのおかげだろうか。世の女どもが、ひと時も彼を放っておくことはなかった。映画監督という職業柄も相まって、黒澤は自身の映画に出演した女優と懇ろな関係になることがしばしばあった。

 彼の映画が、こっぴどく罵られるのも、もしかするとそうしたやっかみもあったのかもしれない。
 
 しかし、そうは言っても黒澤は売れない映画監督である。収入は少なく、その不器用さから生活力も無いに等しい。付け加えれば、黒澤は女より映画を愛する男であった。どんなに良い女であろうと、一方通行では愛は成り立たない。女たちは、次第に彼の下を去っていった。
  
 ただ一人を除いて。


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