8:名無しNIPPER
2021/05/03(月) 12:30:18.44 ID:fXMEQlMj0
その後、朝倉さんが部屋にやって来て、3人でおでんを食べた。
2人が帰ったあと、余ったおでんをタッパーに移して、食器を片付けていた。
「明日も部室に寄っていいか?」
帰り際の、彼のこの言葉を思い出すたびに、
自分でもわかるくらい口角が上がってしまう。
私の世界に初めて現れた、男の人。
頬に感じる熱と、胸から湧き上がる高翌揚感を初めて教えてくれた人。
ふふっ、と笑ってしまう。
明日もまた、彼に会える。
私はいま、幸せなんだろうな。
そう感じるほど、彼の言葉は嬉しかった。
しかし、同時に私はどこか確信していた。
この幸せは永遠に続かないのだ、と。
そう遠くない日に、彼と話すこのささやかな幸せは、
きっとなくなってしまう。
こう思うのは、
彼が私のことを選んでくれないと思うからだ。
彼はきっと、
他の女の子と出会って、
笑い合って、
時には喧嘩をして、
仲直りして、
恋に落ちる。
そんな確信が頭の隅にあった。
食器を棚に戻す。
白の陶器に私の顔が映る。
きゅっと唇を結んでいた。
分厚い眼鏡の奥の瞳は、小刻みに痙攣し、しっとりと濡れていた。
自分はこんな顔もするんだな、と少し笑った。
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