24:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 02:00:55.64 ID:S9RXO5Th0
「だからもう、一人で泣く必要なんてないわ」
霞のような彼女を潰してしまわないように優しく、それでも確かに力を込め抱きしめる。
腕の中で、彼女が何かを呟いた。
相変わらず音にもならない声なのに、私は彼女が何を言いたいのかハッキリとわかる。
「……ああ、小梅は大丈夫よ。あなたが急に出てきたものだから泣いちゃったけど」
きっと小梅にも気づいて欲しかったのだろう。
些かビジュアルが強すぎたせいで怖がられてしまっただけで。
内心そう苦笑していると、彼女がオロオロとしだす。
そんな姿もかつての『あの子』と同じもので。
「ああもう、大丈夫って言ったじゃない。ちょっとあなたに驚いただけでもう落ち着いてるわよきっと」
表情なんてまるで分らない。なのに、彼女がとても申し訳なさそうな顔をしているのがはっきりとわかってしまう。
「大丈夫よ。私たちは、大丈夫」
輪郭をなぞるように彼女の頭を撫でる。
彼女は髪もやっぱり影で、私の指はすり抜けてしまうけれど。
それでも、彼女がどこか安心しているように見えるのは私の色眼鏡だろうか。
「これまで大変だったし、きっとこれからも辛くて大変だろうけど……それでも、大丈夫よ」
我ながら不器用にも程がある励ましだ。
もっと解きほぐすような言い回しは出来ないのだろうか。
それでも、下手に取り繕った言葉よりは伝わるだろう。
それなりに長い付き合いなのだから。
「あなたがいなくて大変だし、私も隊長になったばかりで大変だけど、それでも黒森峰は大丈夫。だって―――――私たちがいるから」
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