11:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:50:20.41 ID:S9RXO5Th0
彼女が近づいてくる。
小梅の言っていたようにコマの飛んだアニメのように不気味な歩みで。
だけど、私は落ち着いて彼女を待つ。
そして、目の前へとたどり着いた彼女は、ゆっくりと私に手を差し出してきた。
「……握れってこと?」
彼女は小さく頷く。
まさか、友情の証とでもいうつもりだろうか。
別に彼女みたいな怪異に友好的なつもりは無いが、毒を食らわば皿までという。
何度かの逡巡の後私は覚悟を決め、だけど恐る恐る彼女の手を握った。
握った手はなんともぼんやりとしていて、その感触は例えるのが難しく、
それでもあえて言うならば『霞を押し固めたよう』といったところだろうか。
感触はあるのに少しでも力を入れると霧散する。
『握る』ではなく『包む』あるいは『触る』に近い。
そんな不思議感覚にほんのりと恐怖が薄れた時――――私の中に誰かの記憶が流れ込んできた。
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