10:名無しNIPPER[saga]
2021/04/18(日) 01:49:42.10 ID:S9RXO5Th0
真っ黒で陰影の無い平面の影がその格好をしているのだと思うに至った最大の理由は、彼女(スカートをはいているので女性と判断する)の頭に突起のような湾曲が出来ていて、
そのラインは私たちが良く見ているもの――――パンツァージャケットと合わせる略帽のものによく似ていたからだ。
その格好に親近感でも感じたのか、あるいはそれが気になって恐怖が薄れたのか。
私は震えながらもその影に声をかけてしまった。
「あなた……うちの学校の人なの……?」
思えば凄く間抜けな問いかけだと思う。
でも、口を突いて出てしまったのだから仕方がない。
すると、影が小さく動いた。
それが『頷き』だと遅れて理解する。
幽霊と意思疎通が出来たという驚き以上に、私は知りたいと思ってしまった。
「あなたは……誰?」
そう言ってしまったらもう、私は彼女から逃げようとは思わなかった。
恐怖はある。
陽炎のように揺らめき、絵画のようにそこにあるその姿に怖気が走る。
なんど固唾をのみこんだかわからない。
だけど、逃げない。
ただ、知りたかった。
何で彼女がここにいるのか。
何で、そんな姿になっているのか。
どうして、私は恐怖に混じって、彼女に懐かしさを覚えているのか。
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