27: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:25:57.08 ID:Pb5RWNl50
なんかもう琴葉は「私はどうすれば良い?」とは聞かなかった。
志保が先の言葉を吐いてからすぐにクルリと背を向けてしまったせいで反応出来なかったのかもしれない。
ただ、素人である俺から見ても志保の背中は強い意志を放っていた。
志保は事務机の椅子に手をかけて一つ深呼吸をした。
28: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:26:33.61 ID:Pb5RWNl50
ドカッ、と粗雑な音を上げて志保が椅子に深く腰かけた。背もたれがギシッと軋むと同時に、志保の左足が持ち上がり、右ひざの上に組みあがった。一連の流れがあまりにもスムーズで、初めからそのポーズであったような錯覚すら覚えた。
その姿勢のまま、志保は顎で琴葉を睨みつけた。視線は琴葉に一直線に向いているのに、俺と美咲ちゃんは蛇に睨まれたような感覚に包まれた。
ただ一人、琴葉だけが怯まずにズンズンと志保の方に歩みを進めた。
29: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:27:05.78 ID:Pb5RWNl50
あぁ、これは反抗的なギャルと堅物な委員長だ。しかしハーヴェイ君のような苦労系愛され生徒会長ではない、毅然として男らしく、皆から頼られる委員長だ。
二人は言葉を交わさない。
しかし、その無音の空間すら二人に支配されていた。目線が、呼吸が、間が、二人だけの空間を作り出していく。
30: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:27:39.50 ID:Pb5RWNl50
「離せよ」
「離さない」
「うざい」
「構わない」
31: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:28:55.26 ID:Pb5RWNl50
「きゃっ」
「まったく、昔の志保はあんなに可愛かったのにな」
琴葉が勢いよく腕を引き寄せ、志保を胸中に抱きしめた。
32: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:29:32.66 ID:Pb5RWNl50
「これはみんなに隠れて付き合っている幼馴染ギャルと堅物委員長ですよ!」
名探偵美咲ちゃんの誕生だった。美咲ちゃん意外とそういうの詳しいんですね知りませんでした。
それと同時に美咲ちゃんが「わぁ〜!」と言いながらクネクネし始める。音無さんに近い動きだ。765プロ事務員の業務継承は滞りなく行われているらしい。
33: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:30:26.91 ID:Pb5RWNl50
美咲ちゃんの頭からピンク色の雲が飛び出し始めたころ、志保の「はい、ありがとうございました」という掛け声と共に琴葉は志保を解放した。
気付けば志保の表情もいつもの北沢志保に戻っていた。しかし相変わらず感情は読み取れない。
フラフラとソファに近づいていき、「ありがとう、ございました」と呟いたと思ったらそのままうつ伏せにソファに倒れ込んだ。
34: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:30:57.08 ID:Pb5RWNl50
なんてことない昼下がりの劇場の事務室。床に倒れている死体が一体、ソファで液体と化している死体が二体、心がどこかに飛んで行ってしまった美咲ちゃんが一人。
その全ての引導を、目の前の一人のイケメンが渡したのだ。
「プ、プロデューサー。ど、どうでしたでしょうか……?」
35: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:31:28.83 ID:Pb5RWNl50
なんとか足に力を込めているが、既に膝が笑っている。
きっと四人とも、こんな気持ちで逝っていったんだろうな。それも悪くないと思い始めてきてしまった。
呼吸が浅くなり、膝の震えが徐々に大きくなっていく。
36: ◆ivbWs9E0to[saga]
2021/03/08(月) 00:32:08.65 ID:Pb5RWNl50
終わりました。HTML依頼出してきます。
イケメン琴葉の供給が多くて助かる。
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