玉座の間にて
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16: ◆CItYBDS.l2
2021/02/03(水) 22:34:11.37 ID:MC1F9erq0

「あの、大変失礼いたしました。なにぶん、礼儀を知らぬ田舎者ゆえ……」

「すまぬ。少しばかりからかっただけだ。続けてくれ」

自然と口元が緩むのを感じる。
その厳格さに、周囲より恐れられることも多い私がこのような戯れに興じるとは。
どうにも、この男には不思議と周りを和らげる力を持っているらしい。

勇者は、頭を掻きながら話を続けた。

「剣を抜く。確かに、児戯にも等しき所作にございます。
しかし、真に魔王を前にすれば、その考えも変わりましょう。

言葉に尽くせぬ恐怖。いや、魔王は恐怖そのものと言ってよいでしょう。
死の覚悟をもってしても、我が四肢は悉く震え、歯が鳴り、瞼が沈み、腰の剣は岩ほど重く感じられました。あれを前にして、剣を抜くのはとてもとても困難なことなのです。

故に、それでもなお白刃を晒した我が先祖は勇者と称されたのです」


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