17: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2021/01/30(土) 07:44:37.42 ID:/1fb2KCg0
※ ※ ※
「う〜ん」
そういうつもりはなかったんです。
今日のライブで配布するためのウチワにサインをしながら、思わずうなってしまう。
ただ私の初めてのライブを、初めて立ったステージを、応援してくれるファンの皆と出会った場所を奪われたくなかった。
でも結果として、常務にただ一人表立って逆らっているあの人への応援になった。そのことでまた私とプロデューサーの関係を勘繰る人が出てくるかもしれない。出てくるかもしれないけど――
「ふふっ」
あの人の力になれるなんていつぶりだろう。そう思うと自然と頬が緩んでしまう。
「サインをしなさいん。ふふっ」
事務所全体が暗いまま迎えた大切な日だけど、少しだけ明るい材料があって良かった。
「……」
「ん?」
後ろの方で戸惑ったような気配がして振り向くと、そこには今日一緒にライブをする卯月ちゃんに凛ちゃん、それに未央ちゃん。そしてあの人が立っていた。考えごとをしていて、ドアが開いたことに気づかなかったみたい。
『お、おはようございます!』
「おはようございます」
初々しさが残る三人の挨拶は気持ちの良いものだった。他のシンデレラプロジェクトの子たちもそうだけど、おかげで彼に担当されていることに暗い嫉妬を感じても、何とか抑えることができる。
……もしろくでもない子たちばかりなら、遠慮なく奪い取って二人で別の事務所に逃げ出せただろうか。
『ぐっふっふっふ。杏を働かせたいのなら、三年後に退職金として養うことを約束してもらおうか』
『ドッカーンッ! グシャンッ、ベンベンッ! ……あ、もう壊れた。このギター(経費¥280,000)全然ロックじゃないよ! ちょっと叩きつけただけで壊れちゃう』
『力こそ正義☆ にょっほーい! いい時代になったにぃ☆』
……あの子たちが悪いことをする姿がいまいち想像できない。そんなことを考えていたら、同じ控室にいた三人の方から気になる内容が聞こえてきた。
「学園祭巡り……もっとビックに、お客さんと超盛り上がる……いつもと変わんないか」
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