31:名無しNIPPER[saga]
2021/02/16(火) 00:32:09.66 ID:bewIDN5b0
大渓谷の最深部
白ルシア「彼が来るのは、そろそろかしら」
ロラン「例の指揮官が来るってことかい、構造体たちを引き連れて」
ロランは、持っている武器を弄ぶのをやめて鋭い目を白ルシアへ向けた。
ロラン「君さえよければ彼は僕が殺そう。厄介な敵を倒すのは、なかなかに愉しいからね」
彼には何度も邪魔をされたし。と付け加えてロランは嗤った。
白ルシア「彼はわたしの獲物」
ロランはため息をついた。
ロラン「すると僕はまた構造体たちの相手なんだ」
白ルシア「頭がいなくなれば、勝手に崩れるわ」
ロラン「いなくなる、か…君は、珍しくあの指揮官のことを気に入っていたと思っていたんだが」
白ルシアは大渓谷の先を眺める。
白ルシア「そうね、だから彼は助けてあげることにしたのよ」
ロランは大渓谷に無数に存在する小石ひとつ分だけ、彼に同情心が芽生えた。
白ルシア「――――――でも人類は必要ない」
それだけ言い残して、白ルシアはその場から一瞬でかき消えた。
ロラン「優しいようで、全く人の心が分かっていない。恐ろしく残酷なことだね。背筋が凍るよ」
武蔵玖型「…」
ロラン「人を本来守るためのガードマンであった君はどう思う」
武蔵玖型「ヒト――コロス――――」
ロラン「ああ、知ってる。でも君の身についている包帯は、ガードマン時代にそのヒトにしてもらったものだろう?」
武蔵玖型「――――コロス」
ロラン「それでも包帯を捨てようとはしないんだね」
ロランが包帯を千切って奪うと、武蔵玖型はじっとその場で固まる。
ロラン「ううん、これを条件付けされたプログラムというべきかな。あるいは妄執か」
ロランによって捨てられた包帯を武蔵玖型がノロノロとつまみ拾い集める様子を、ロランは興味深そうに眺めていた。
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