2:名無しNIPPER[saga]
2021/01/10(日) 19:12:05.88 ID:rddhOFwr0
思い出すのは幼少時代、まだ社会の辛さも学生の苦労も学校の人間関係も何も知らなかった、両親から与えられる愛情と食事と睡眠、幼児向けの娯楽と悪いことをして怒られるのだけが世界の全てだった時代、この遊園地が自分の記憶の始まりだった
平々凡々とした日々、自宅や他に連れていってもらった場所は忘れていき、最後まで残された最初期の記憶、家とその周りだけが全てな自分にとってここは本当に夢の世界だった。
見たこともない程の人、人、人。テレビの中でしか見たことないキャラクターたち、きらびやかな眩いばかりの装飾と鳴り止まない音楽、目にするもの全てが輝いて見えた。目に映る全てが自分を歓迎しているように感じた。
人々のざわめきも、風の音も、空気すらも、何もかもが新鮮で、いつも過ごしていた世界とは違う、隔絶された夢の国だと、そう感じていた。
目を瞑って思い出に耽る自分の真横を幼い少年が駆けてゆく。それは幼少期の自分、あの頃の自分がまるでそこにいるかのように笑いかけてくる。
きっと自分を通した視線の先に両親がいるのだろう。早く来てよ、遊園地に入ろうよ。そう急かしている。両親のどちらかが転ぶから走らないでと注意する。どちらかが迷子になるぞと慌ている。遊園地は逃げないからと、それでも一秒でも早く遊びたかった、一瞬でも楽しい時間を減らしたくなかった。
幼い自分は何者にも代え難い笑顔を湛えてゲートの向こうに消えていく、最後まで顔の見えることの無かった両親もその後を追って消える。
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