【ミリマス】帰省できなかったシアター上京組の年末年始
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9:帰省できなかった年末年始 8/9[sage saga]
2021/01/05(火) 22:36:28.48 ID:1nFF4fw90
「やっぱりみんな餅からいくんだな」
「あまりにいい匂いがするものですから……」
「あーーーっ、あかん! これはあかんで!」

 口中に広がる甘みと、ほんのり塩気を含んだバターのコクに、奈緒は声をあげずにいられなかった。絶対に美味しいはずだ、という予想は確信に変わり、喉の奥へ餅があっという間に滑り込んでいく。まだ一枚目の餅を食べきっていない内から、奈緒は視界にある食べ物をとりあえず紙皿の上へ載せていった。

「なぁヒナ、これどうやって作るんだ?」
「後でスマホの方にレシピ送っておくねぇ」

 スマートフォンを取り出していじり始めたひなたを見て、奈緒は携帯電話を買ったばかりの祖父の姿を思い出した。スマートフォンを貸与されて随分経つのに、それぐらいひなたは電子機器に不慣れだった。

「この辺の店見てて思ったんやけど、東京って四角い餅ばっかり売っとるんやな。餅は丸いもんやろ」
「そう言われれば……地元みたいな丸餅って、無いことは無いけど、あまり見かけなかったかもしれないな」
「東日本と西日本で分かれているそうですね。石川だと、どちらの餅も半々ぐらいですが……」
「うちは四角だねぇ……。搗いた後のお餅を平べったく伸ばしてから切り分けるとそうなるべさ」
「この四人って出身地全然ちゃうねんなぁ。訛りもバラバラやし、そもそも紬とジュリアは方言話さへんよな」
「ええ、通じなかったら恥ずかしいですから。もっとも、慌てていると、つい金沢弁が出てしまうこともありますが……」
「あたしは、両親が標準語だったからな。親戚とか地元の友達はみんな博多弁だから、話せなくはないぜ」

 ばってん、あたしん身なりで博多弁ば喋ったら、ガラが悪かて思わるーやろ? そげなん、ロックやなかな、って思うて。

 一呼吸置いてから、わざわざジュリアは博多弁でそう喋ってみせた。

「……他のヤツ、特に茜とバカPには言うなよ。からかわれたら面倒だから」

 クールな見た目に反するギャップの可愛らしさを奈緒は早速からかいたくなったが、耳をほんのりと赤くしているジュリアを見て、言いたかった言葉をたこ焼きと一緒に喉の奥へ押し込んだ。それ以上の言及は許さない、とでも言いたげに、ジュリアもきなこ餅を丸ごと口の中に放り込んでいた。

「みなさん、新年の抱負などは、決まりましたか」

 お茶を飲みながら、紬が尋ねてきた。大晦日から元日にかけての数時間では結局うやむやになったままの話題だった。

「紬はどうなん?」
「私からですか……。衣装のデザインに参加したい、と考えています。抱負というよりは、やりたいこと、の話ですが」
「やりたいことなら、あたしもあるなぁ。劇場に林檎の木を植えるか、畑を作るんさ。敷地内に空き地があるって、プロデューサーが言っててねぇ」


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