32:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/24(木) 06:05:26.89 ID:uyzFntxd0
と、威勢よくペダルを踏み込もうとしたところで、見知った顔を見かけた。俺はそれに声をかける。
「おーおー、豊橋さんじゃあないですか」
「……あ、辰野君」
柔らかそうな髪を靡かせてこちらへ振り返った豊橋は、ワンテンポ遅れて返事をくれた。それなりの人が行き交う商店街通りも、やっぱり彼女の周りだけは人が遠いようだ。歩きやすそうで何よりでござる。
「豊橋もバイト終わり?」
「うん。あそこの喫茶店で」
と、豊橋が指さす先は、小洒落た喫茶店。でもごめんなさい、実は俺それ知ってるんです。
そんな罪悪感を消すように、俺も目の前の中華料理屋を指さす。
「俺もここで」
「……そうだったんだ。こんなに近くだったんだ」
豊橋は驚いたような顔をした後、目を細めてみせた。あれ、前にお店の宣伝しといたのに忘れられてる? ……と思ったけど、そういえば宣伝文句の白い幟は夏の終わりにとっくに撤去してあったことを今さら思い出す。
赤い看板と白い幟が目印……うん、それじゃあここだとは思わないわね。
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