12: ◆copBIXhjP6[saga]
2020/12/06(日) 15:54:57.41 ID:/JAVxUrS0
俺だって試験の点数はそりゃツバメの如き低空飛行かもしれんが、地頭は悪いほうじゃない――――と思いたい。
古泉の理論がどこへ着地しようとしているのかは、何となく察しがつき始めていた。
古泉「目的を達成するのに三十分ほど掛かるとして、ここから片道三十分で行ける距離には何があるでしょうか?」
キョン「!!......ちょっと待ってろ」カチカチ
現代文明の利器というのは非常に優秀で、北高から最寄りの電器屋までの所要時間はほんの数分足らずで判明した......丁度三十分。
ここに行けばもっと少ない労力で済んだろうに、ハルヒはそれを拒んで俺と古泉を倍以上も距離のある大森電器へ出向かせたのだ。
キョン「つまりお前はこう言いたいわけだな。ハルヒたちは俺たちを学校から、たぶん部室から遠ざけたかった」
キョン「そして時間をなるべく稼ぐために、わざわざ遠くの電器屋まで徒労を掛けさせた、と」
古泉「はい。その通りです」
キョン「理屈は完全に理解できたぜ。だが一番不可解な謎が残っちまう」
古泉「どうして涼宮さんたちが、あなたと僕に二時間半も席を外させたかということですね」
キョン「そうだ。ハルヒが奇行に走ってるってのが第一に考えられることだが――――」
古泉「彼女がそういった事をする時、わざわざ僕たちを遠ざけるでしょうか?」
キョン「いいや。あいつは俺たちが居ようが居まいが構わず実行する女だからな」
古泉「僕もそう思います」
キョン「となると......うーん、さっぱり解らん!」
俺はここで考えることを放棄した。古泉の推理が本当だとすればハルヒが何かを企んでいることは確かだが、それを知る術はない。
だがそもそも、そんなに物事が上手くいくものだろうか?こいつがいつも通りの悪い癖で要らぬことまで考えてしまっただけだとする方が自然だ。
そうこうしているうちに、俺と古泉は再び部室の前に立っていた。
コンコン
「どうぞー!」
古泉「そうだ、僕はコーヒーの無糖でいいです」
キョン「......は?」
古泉(ごめんなさい。この賭けは最初から僕の勝ちだったのですよ)
古泉(なにせ......ふふっ)
そんな発言とは関係なく、俺の右手は古びたドアノブを回して――――
「ハッピーバースデー!」
――――破裂音と紙吹雪が俺を迎えた。
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