83:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:04:25.10 ID:tRJaplXx0
演じながら、あるいは人がそうするのを見ながら、考える。モルジアナは今、誰の、何の為に動いているのだろう。
アリババはまだ主人ではない。カシムの妻だろうか。自分に降りかかる火の粉を振り払う為か。それとも、亡き主人の復讐を果たす為だろうか。守るべきものを守れなかった、奴隷の汚名返上の為に。
モルジアナにとって、そもそもカシムは想うべき存在であったのか。奴隷が、世情からいえば人格を否定されるような支配を受けていたのではなかったろうにせよ、果たして仕えることに満足を見出せる関係性だったのか。千夜に言わせれば、愚かな主人だ。合言葉、それも胡麻≠フ一言だけを忘れる間抜けな最期は、モルジアナの知るところではなかったとはいえ、彼女を含めて奴隷の一人も連れて行かずに結局自滅したのは頂けない。財宝を運ぶにも人手はあった方が良かっただろうし、結果論ながら呪文も忘れずに済んだ筈だ。それは罪の意識の為、他の者に秘密を共有する必要を嫌ったからであっただろうか。それとも、悪事は一人で背負い込むという男気か。
いかに主人が強欲で愚かで、無様な最期を迎えたのだといっても、それは自分を信用しなかったからだと、モルジアナは笑いとばせただろうか。それとも、自分が信用されなかった理由を胸に問うたり、巻き込むまいとした主人の気遣いを汲んだだろうか。
いずれにしても、《モルジアナは主人の死を悲しみました》とか《むしろ内心喜びました》とか、簡明率直にはガランの物語に書かれていない。書かれていないから考えなければならない。考えたところで、モルジアナの気持ちが分からない。想像したくもないのかもしれない。分かる立場になど、身を置いた時点で白雪千夜の破滅ではないだろうか。
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