白雪千夜「アリババと四十人の盗賊?」
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82:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/02(水) 01:03:48.02 ID:tRJaplXx0
「では案内の前に、目隠しをさせて頂きます」
「目隠し……? もしやましい仕事なら……」
 蒼い眼のムスタファが、取り決めた通り肩越しに返す。
「いいえ、靴屋様。誓って、やましい仕事ではありませんよ」

 もう一枚金貨、手を繋ぐように。頼子は注意深く受け取ると、あえて手を遠ざけ、顔も逸らし、突き放すようにしながら流し目で検める。その気配を、千夜は感じる。その鋭いまでの視線、抉るような懐疑は、演技を観るものからも納得を奪う。その小道具を、状況、お約束からして金貨だろう、と考えていたところを、ひょっとしてこの舞台では違うのかもしれない、と。そうして剥がされたレッテルは、最後に頼子が納得してみせることで、実在感へと変わって金貨を顕示する。観客は記号的な理解を奪われ、劇に引き込まれていく。そういう魔力こそが、頼子の目力には秘められている――というのが、千夜の分析だ。きっとこの眼差し一つのために、彼女は今の役に選ばれた。ひょっとしたら、このためにアイドルに選ばれさえした。



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