55:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:41:12.78 ID:6NLLeJ5C0
「……えっと……」
困惑した声色に、千夜はまたぞろ内省を余儀無くされた。どうも近頃、かっとなるようだ。
「いえ…… 美しいものには美しいものの、灰色には灰色の世界があるものですよ」
聞いて、帽子を触っていた文香は顔を傾け、こちらをじっと覗き込んだ。影が、かえって探るような瞳を印象付けた。千夜の表情や所作ではなく、ここにない紅を追っているのだと分かった。
「千夜さんは、…… いえ」
彼女は言葉を切ると、考え直します、というように一旦顔を伏せてから、また言った。
「白状します。……本を読み出すと、乗り過ごしてしまうのでは、と」
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