54:名無しNIPPER[sage saga]
2020/12/01(火) 23:40:31.48 ID:6NLLeJ5C0
千夜自身の事ながら、心からの親切を提案出来たものだ。そうして貰わないとこちらが気を遣うのでね、とまでは言い添えなかったが。
「はい、ありがとうございます」
文香は言ったが、不安そうに自分のトートバッグと、車内上方のモニターを交互に見比べた。バッグには『神田古本まつり』のプリントがされ、モニターには次に止まる駅が――『渋谷』と大きく――表示されている。
彼女は再び口を開いた。
「あの…… こうして、窓の外を見ているのも、楽しいものですから」
「ただの灰色の街並みですが」
「はい、でも……」
「それもあいにく、曇りです」
「はい、でも……」
「上も下も灰色ですね」
「……灰色が、好きなのです」
「ん……」
「……?」
「あまり似つかわしくありませんよ、貴女には」
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