高森藍子「加蓮ちゃんが忙しい日の、いつもではないカフェで」
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5:名無しNIPPER[sage saga]
2020/11/29(日) 18:52:38.91 ID:SopT+Ge10
 カフェの一角で、ちいさく笑ったおひとり客に、気づいたのは近くを通りかかった店員さんだけ。
 不思議そうに私のことを見て、私がスマートフォンを持っているのを見て、あまり気にしていない様子で歩き出そうと……2歩進んだところで、ぴたっと立ち止まり、ちら、と私のことをまた見ました。
 これ、私のことがばれちゃっているのでしょうか。
 いちおう変装はしてきています。春菜ちゃんから借りた眼鏡と、愛梨さんから借りた大人っぽいカーディガン。歌鈴ちゃんも何か貸してくれようとしていましたけれど、残念ながら、なにも思いつかなかったみたい。今度、歌鈴ちゃんのやっている巫女さん体験ツアーに参加させてもらっちゃおうかな?

 変装していても、自分がアイドルだってばれてしまうのは……もしかしたら、困っちゃうことなのかもしれません。
 でも、ほんのちょっぴり嬉しいのっ。
 前に、加蓮ちゃんとカフェ巡りをしていた時、加蓮ちゃんだけがアイドルだってばれちゃって、私のことは気づかれないってことがあったり……。あと、加蓮ちゃんが優しくしてあげている、病院にいる子、そーちゃん。あの子も私のことを知らなかったりしてて……う。思い出すと、お腹がちくっとしてきました……。

 今から知ってもらえればいいんです。そう、今からっ。

 その先が、私の目指す場所――もう1度、加蓮ちゃんたちの写真を開いて、じっ、と見ます。
 とっても楽しそうな笑顔。仲のいいみんなで楽しそうにしているだけではない、本物のアイドルの耀き。

 全国の、いえ、世界中から注目される立場に……もし、自分がなったらと、少しだけ想像してみました。
 思い浮かべた光景には、薄いもやがかかっていて、何も分かりませんでした。
 その時の私が、どんな姿をしているかとか。どんなことをしているだろうとか……。
 そんなことは、何も分かりませんでした。


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