37:名無しNIPPER
2020/11/08(日) 09:29:50.98 ID:FQVp12gN0
* * * * *
「アピール、でございますか」
「そう」
翌日のレッスン後、改めて机を囲む二人。話題は当然ライブのことだ。ただ今度のものは直近の二回とは少し異なる、というプロデューサーの説明から始まった。
幾つかポイントはあるけれど、何より大きいのは全体演目終了後のこと。ここで参加メンバーの各人の時間にも尺が取れるとのことで、皆それぞれ二、三分程度の自己アピールを考えておくように、とのことだった。
事務所主催によるライブ。大きな別イベントに沿っているわけでもなく、また別事務所と一緒でもないので、プログラムの構成にある程度融通が利く。だからこそ、事務所としては若手アイドルを宣伝するチャンスにしたいし、各人としても売り出しどころといえる。
別に名乗るだけでも、軽く身の上を語ってみるだけでもいい。でもアピールできることがあればしたほうがいいし、少しでもファンの印象に残してほしい。だからみんな少し考えてほしい、とのことだ。もちろん設営の時間はないし、その場ですぐできることに限るけれど。
「やっぱり何か、ご披露したほうがよろしいですかねー」
「無理にとは言わないけど、でも」
やっぱりせっかくのチャンスだし、ライラさんですと言うだけなのはもったいないと思うよ、とプロデューサーは説明した。それはそうだろう。彼女メインのライブではないとはいえ、ライラももう少なからず知名度はあるし、ファンだってついている。彼女に期待して来ているファンだっているかもしれないのだ。それに、そうでない人にも知ってもらえる機会でもある。
「ダンスや歌をしてみせる人、特技を披露する人、ちょっとクセのあるキャラを出す人とか、いろいろ考えられるね」
「でもライラさん、特にみなさんに披露できるスゴ技は持っておりませんですねー」
「まぁ、あまり堅く考えなくていいよ。せっかくだし何かやりたいこと、披露したいことはないかというのを考えていこう。まだ時間はあるから」
とはいえ期日は迫っている。何がいいだろう。ライラもしばし考えを広げてみたが、結局その場では浮かばなかった。
「考えておきますです」
63Res/192.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20