【ミリマス】ジュリアがメシマズ克服をPに思い知らせる話
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5:あんたを驚かせに来た 4/6[sage]
2020/11/04(水) 00:04:59.71 ID:pA5LqmH70

「ほら、フタ開けろよ」
「あ、ああ……お、見た目はまともだな」
「味もまともだよ。多分な」

 ふりかけの小袋をプロデューサーが手に取った。白い平野部が色を持ち始めた。ケースから出された箸は、まず肉じゃがに伸びていった。あの日にひなたが作ってくれたのと同じ材料を使って、同じ分量で、同じ手順で作って、ほぼ同じ味になったものだ。味に関しては今日の弁当箱の中身で一番信頼のおけるものだった。
 寸法は同じはずであったが、隣の席で使われている箸は、ジュリアが使っているものよりも小さく見えた。違う。箸が小さいのではない。彼の手が大きいのだ。指も長くて、骨ばっている。あまり日焼けしていない手の甲に静脈がうっすらと浮き出ていて、奇妙な色気があった。

「……ジュリア?」
「何だよ、早く食えって」
「あまり熱心に見つめられると、食いづらいんだが」
「き、気のせいだろ? ……そんなに見てないからな? いいから、感想聞かせてくれ」

 隣の男を急かしながらジュリアが自分の弁当のニンジンを口に運ぶと、ようやくじゃがいもを箸でつかんだ所だった。弁当箱から持ち上げられて、微かに猫背になった頭が食らいつく姿勢になり、少しカサついた唇が開いて、吸い込まれていくのを、ジュリアは緊張と共に見守っていた。彼はそのまま何も言わず、肉、イカ、米、大根、卵焼き、キャベツと次々に箸で連れ去っていった。何のコメントも出てこない。言葉も出ないほどにマズくて、さっさと食べ終えようとしているのだろうか。ジュリアの、箸を握る手に、力が入った。

「……何か言えよ、バカP」
「あ、悪いな。美味しかったから、つい」
「え……」

 美味しかったから、つい。今しがた出てきたばかりの言葉を二、三度反芻し、ジュリアは口の中のものを飲み込めずにいた。

「何て言ったらいいんだろう。感激して飛び上がる美味さっていうよりは、普段食べるならこういう味がいいよな、っていう。地味に……いや、地味は不適切だな。安心できる味っていうのかな。こういう煮物とか久々だよ。体に染み入る感じがする」
「あ、ああ……」

 プロデューサーが箸を止める様子は無い。既におかずの半分近くが無くなっていて、食が進んでいないのは、横目で右側を盗み見ているジュリアの方だった。

「美味しいよ、ありがとう」
「そ、そうか……よかった、うん」



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