【ミリマス】ジュリアがメシマズ克服をPに思い知らせる話
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あんたを驚かせに来た 2/6
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2020/11/04(水) 00:03:16.07 ID:pA5LqmH70
金木犀の香りもしなくなり、冬の足音が聞こえてきた、ある秋の朝。その日は午前に雑誌からの取材、午後のレッスンに加えて合わせ練習と、朝から夕方まで予定たっぷりだった。アイドルとしての姿をしなければならない都合上、いつものように髪をセットすることができなかった。できなくもなかったが、そこまで強くこだわる気にはならなかった。それよりも優先すべきは、今日の弁当の用意だった。
ひなたが泊まりに来たことがきっかけで、ジュリアは能動的に台所に立つようになった。料理ができない理由を今まで考えたことなど無かったが、劇場の台所でひなたや美奈子に付き添ってもらっている内、余計なことをせず基本に忠実にしていれば自然とそれなりのものが出来上がることを学習してからは、「よく知りもしないのに身勝手な自己流でどうにかしようとしていたこと」が主な原因であったことを知るようになった。少なくとも、現在のジュリアは、料理をする時は、常に匙を手元に置くようにしていた。
最近買った卵焼き用のフライパンは正解だった。スーパーで見かけるあの「厚焼きの卵焼き」を自分で作れた時は踊り出したいほどで、調味料の配分を間違えてしょっぱかったのに、夕食のテーブルに並べる前に台所で半分ほど食べてしまっていた。電子レンジが単に食べ物を温めるだけのものではなく、炒める前、あるいは煮る前の野菜に火を通したり、材料と調味料を放り込んで煮物やカレーを作るのにも使えてしまうことを知った時は、目から鱗が落ちた。そもそも、難しいとばかり思っていた煮物のような料理も、必要なものが分かってしまえばそう困難でもなかったとジュリアは体感していた。ヒラヒラの衣装をあてがわれて可愛らしくスマイルを作る方が、今のジュリアにとっては大変な苦労だった。
「あとは……何を入れようかな」
一度に何種類も作るのはジュリアのキャパシティを超えていた。多めに作って容器に保存しておけばいい、と助言をくれたのは、同じく一人暮らしをしている紬だった。すっからかんに近かった以前とは違い、何かしらの作り置きが常にストックされている冷蔵庫を開き、肉じゃがと、イカと大根の煮物を保存した容器をそれぞれ取り出す。あと一種類ぐらいは無いと弁当箱のスペースが埋まらない。レトルトのミートボールでも入れておこうか……と思っていた所にちょうどよく、使いかけのキャベツとほうれん草があった。とりあえず炒めよう、とジュリアはそれらを取り出し、右利き用に作られている包丁で慎重に切り始めた。包丁の買い替えも真剣に検討すべきかもしれなかった。
フライパンで油を温める間、ジュリアはまな板の脇に置いた二つ目の弁当箱に視線を落とした。先日の面談で食生活へ苦言を呈してきたプロデューサーへのサプライズのつもりだった。あの女子のように、違う中身を用意する手間暇をかける気は起きなかったから、自分の弁当を二人分作るのと同じことだった。ただ、食の細い自分の胃袋と成人男性の胃袋を同じ天秤で測るわけにもいかなかったために、弁当箱は大きめのものを調達した。自分で食べる分には問題無いものが作れるようになった自覚はあったし、定休日に店のキッチンを使わせてくれた美奈子も、指でマルを作って麻婆豆腐に合格点をくれた。ただ、友人への気遣いを多分に含んでいたであろうそれが、成人男性にも当てはまるかどうか……その点についてジュリアは今ひとつ自信を持てなかった。「料理下手とはもう言わせない」という目標を達成できればそれでいいが、どうせやるのならポジティブな評価を獲得したかった。美味い物を食ったとき、あいつはどんな顔をするんだろう……と、味見を済ませた野菜のソテーをフライパンから出しながら、ジュリアは考えていた。
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