15: ◆gxyGj7UNSanm
2020/10/30(金) 02:25:07.34 ID:dk3wt1/f0
チョコレート、というお菓子がある。
別に思い入れも何もあるわけではないが、何かと差し入れというものが多いこの業界では食べる機会が多い。
もしかしたら、他の業種であってもそれは変わらないのかもしれない。
ただ、それにしても765プロではそれを食べる機会が多かった。
「でも、春香が作ってくるようなお菓子はチョコレート系は少ないんだよなあ」
気を使っているのか、いや。
どちらかというと、通勤しているうちに融けてしまうからか。
特に冬などは電車の中の温度もそこそこ高い。
確かにチョコを使用した菓子など作ってきても、誰も喜ばないような気もする。
「にしても溜まりすぎだわこりゃ」
と、冷蔵庫に置きっぱなしにしてあるチョコレートの山を見る。
賞味期限は切れていないし、問題ないとはいえ、溜まりすぎである。
チョコレートに限らず、出先でお菓子をもらうというのは珍しくない。
大抵、そういうのはアイドルにあげてはいおしまい、なのだが、人気がないのか余り気味である。
ただのチョコレートだったら自分で処理するかもしれないが、これは高カカオチョコレート。
食べられなくはないが、苦くて食指が伸びないのである。
置いておいたら、誰かが―――主にどこぞの双子がさっさと食べるかとも思ったのだが、そうでもなかった。
まあこんなもんは一旦誰かが食べ始めたらあっという間に消えていくものである。
「青羽さーん」
と、そこで近くで作業をしている同僚に声をかける。
「はーい?」
手を動かしながら、くいっと首だけを回す彼女の声はアイドル顔負け。
多分声だけでも、道端ですれ違った相手だったらスカウトしていただろう。
南国育ちのわりに、目鼻立ちの彫は深いわけではない。
むしろ、髪型と相まって幼いようにすら見える。
青羽美咲。765プロ劇場に新たに加わった事務員である。
さすがにアイドルに数十枚のチョコレートを一気にあげるわけにもいかない。
なので、一枚だけでも、と思ったのだが。
「チョコレートいります?」
「あ、高カカオチョコレートですか?」
「はい、結構残ってて」
「私、あの苦さちょっと苦手なんですよぉ」
なんとまあ。
俺と同じ理由と来た。
これはアイドル相手にも引き取りを拒否されるのではなかろうか。
「そうですかぁ……参ったなあ、家に持ち帰った方がいいか……」
「皆さんに配ったらいいんじゃないですか?」
「えーでも……青羽さん断ったじゃないですか……」
「でも、美容効果があるらしいですよ!そのチョコレート」
「なら青羽さんも一枚どうぞ」
「だから苦いのは苦手でー!」
「嘘をつけゴーヤ食べれますといっとったろーが!」
「それとこれとは違いますー!」
さてどうしたものか。
まあ別に重要な問題ではないが、いつまでも共用で使用している冷蔵庫の一角を占めているのは問題である。
誰か食べてくれんもんかなあ。
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