【まどマギ】まどか「許さないよ、ほむらちゃん」
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15:名無しNIPPER[saga]
2020/10/08(木) 21:24:25.06 ID:TQmNYL0C0
ほむら「……っ!」

思わず、反応してしまった。久しく呼ばれていなかったその呼び方。遥か昔に私がそう呼ばれていた事、それを思い出した。

まどか「……そんなに泣きそうな顔をして悪口を言っても、ちっとも怖くないよ?」

ほむら「……そ、そんなこと……!」

指摘されて初めて気付いた。もはや感情なんて枯れ果てたと思っていたのに、私の目には涙が溜まっていた。

……だめ。絶対に見せてはいけなかった。彼女に弱みを見せてしまえば、もう私と関わる事を諦めないだろう。そうなってしまえば、記憶の戻るリスクも高まる。彼女の記憶に手を加える事は最終手段、絶対にこれ以上彼女の記憶に干渉したくなかったのに、これでは……


そんな精神状態とは裏腹に、涙はとめどなく流れ出る。まどかはすっと寄ってきて、私をそっと抱き締める。

まどか「私……ずっとほむらちゃんに何かを感じてたんだ。それがなんでかは分からないけど、とにかく放ってなんておけないって、だからしつこく話しかけてたんだ……」

ほむら「うぅ……っやめて、離れてっ……」


違う、私が泣いているのは彼女の為じゃない。これは自分の性格の悪さに対する自虐の涙。誰よりも大切な人に対して平気で暴言を吐ける我が身に対する涙。どこまでも自分勝手な涙。

まどか「ほむらちゃんって……そう呼ばせて欲しいんだけど……いいかな?」ティヒヒ

ほむら「……今だけっ、今だけはお願い……!」


もう、記憶を消すしかない。彼女が私と関わらないように、記憶の中に私への恐怖を擦り込むしかない。だから、これが本当に最後の甘え。彼女に甘える最後の時間。



だから、今だけは……彼女と触れ合っていたいと、心の底から願っていた。






だからこそ、気付かなかった。屋上の柵の建て付けが「偶然」悪くなっていたこと。

まどかが私に体重をかけ、その柵がいとも容易く折れたこと、抱き合っている二人が共に落下するその時、まどかは、確かに笑っていたこと。


当然ながら、まどかは飛ぶ術を持たない。瞬時に私は悪魔としての羽根を出し、空を飛んだ。

ほむら「くっ……!」

見られてしまった。彼女に、まどかに決定的な場所を見られてしまった。

これで記憶が戻ったら……そんな思いが瞬時に身体を走る。

しかし、意外にもまどかは驚かなかった。また、危惧していた記憶の復活も起こらなかった。


まどか「……すごいよ!ほむらちゃん!もしかしてほむらちゃんも魔法少女だったの!?」

ほむら「!!……ええ、まあね……」

まどか「うわー、きれいな羽根……まるで天使様みたいだよぉ」

ほむら「天使、ねぇ……どちらかといえば堕天使じゃないかしら?」

流石に悪魔と形容してしまうのは直接的すぎるし、彼女の発想的にもそちらの方が似合うだろう。

お姫様だっこの体勢で地上へと降り立った私は、そっとまどかを地面に下ろす。


まどか「ね、ほむらちゃん……今日のこと、私はわすれたくないから……最後に手を繋ぎたいな……」

ねだるような目でこちらを見つめるまどか、そうだ。どうせ記憶を消すのだ。私の最後の思い出としては最高だ。昨日のような別れではなく、こうして最高の時間を味わえただけでも、「神様」の慈悲だろう。


手を差し伸べるまどかに、私はそっと手を伸ばす。
 


デジャビュ。手を差し伸べる「神様」を引き裂いたかつての私。そして、今まさに差し伸べられた手を握る鹿目まどかの目がほんの僅かに金色に染まっていた事に、最後の一瞬でしか気付けなかった。



その一瞬で気付いた時にはもう遅い。彼女が両手でしっかりと私の手を掴んだ瞬間、私の世界は、文字通り真っ白になった。


「この時を待っていた……なんてね」

いつか私の言ったその言葉が、そっくりそのまま返される。刈り取られる意識の中で最後に聞こえた声であった。


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