14: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/27(日) 23:47:30.34 ID:PHaCgA4wO
果穂はしばらく立ち尽くしていた。はっと思い出し振り向く。紙袋が草の上に転がっている。袋の口から潰れて混じり合ったドーナツの破片が吐瀉物のように溢れ出ている。よろよろと歩いていき、破片をひとつひとつ力なく拾って紙袋に戻す。袋の中身は無残な様子だ。色とりどりだったドーナツのコーティングはバラバラになって、はらわたが飛び出たみたいだ。果穂は袋の中を覗き見る。破壊されたゴミだった。あんなにもキレイでおいしそうだったドーナツをゴミとして捨てなければならない。
果穂は罰を与えられたような気持ちだった。
しばらくのあいだ泣くのを堪え、果穂は歩き出した。そうせざるをえなかった。草の上から地面にもどり、ベンチの横を通り過ぎると、自販機とその横にあるゴミ箱が目に入った。おそらくは缶やペットボトルを捨てるためのものでドーナツのクズを捨てるのには相応しくないだろうが、とにかく近づいて確認してみることにした。
自販機横のゴミ箱から凹んだ空き缶やベタついた包装フィルムのペットボトル、沈殿した飲料が残るドリンクカップ、いくつものお菓子のゴミが透けて見えるコンビニのレジ袋、食べカスがこびりついた串、タレが濁ったプラスチックのパックなどが溢れた液体で汚れたビニールのゴミ袋からあふれだしていて、下の地面だけでなく、自販機本体の側面まで汚していた。
久住が言った通りのろくでもない現実の一端、それが果穂の目の前にひろがっていた。
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