小宮果穂「ドーナツのクズ、メロンパンの車」
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12: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/27(日) 23:45:52.87 ID:PHaCgA4wO

久住「でも結局、人間死んだらゴミやしな。生きとるあいだだけええことしてもしゃーないんちゃう?」


 果穂ははじめ、久住の言っていることが理解できなかった。理解しかかったとき、果穂は無意識にそれを拒否した。人間は死んだらゴミになる。生きてるあいだにどれだけ善行を重ねても、それが無価値になる。それどころか害悪になる。存在の根本からして正義などありえない。

 果穂にはまるで悪魔が善人を嘲笑っているかのように聞こえたが、久住にとってはごくあたりまえの事実を言ってのけただけに過ぎなかった。


久住「どうしたん、その顔? もしかして知らんかった? 若いなー。果穂ちゃん、世の中まっとうな死に方できる人間ばっかちゃうで。黒ーい泥水に飲み込まれて誰にも知られんまま、腐って骨になった名無しの権兵衛さん、おれはようけ知っとるよ。そのどさくさで強アルカリ水のタンクに入れられた奴もおったなー。火事場泥棒の、まあ火事場ちゃうけど、泥棒同士の仲間割れでな。もう十年くらい経つかー。いまドロッドロやな、そいつ」


 言葉の途中で久住は地上に光と熱をもたらす太陽を見上げた。地上にはじめて光をもたらしたそのときから変わらず天に在します太陽は、久住が口にした十年という年月が過ぎ去るまえもそこにあり、その不変性は過去への入口であるかのようだった。

 久住は右手の親指と中指で太陽をつまむようにしていた。よく見ると指のあいだにさっき投げ捨てたものとは別のドーナツEPがあり、久住はその穴越しに太陽を見上げているようだった。


久住「生きとったらゴミ出す、死んだらゴミになる。そんな存在が地球の環境を守ります言うても信じられへんよ、説得力ゼロやん」


 太陽を見上げていた久住は果穂へ視線を戻した。そして指先をゆっくりと振るい、果穂の背後にあるベンチを指した。



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