ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/22(火) 20:34:29.61 ID:kGu0y7r00
だがそれに対する師匠の返答にはもっと驚かされた。
「そうですね。ひとつだけ言えることは、我々が考えるべきは、どうやって件の神霊を掻い潜り遺跡の調査を行うかという一点だけ、ということです」
「ま――待て待て待て!」
泡を食ったような勢いで、ゴルドルフが悲鳴染みた声を上げる。
「しょ、正気か貴様! この期に及んで先に進むだと!? 隊員の7割以上が動けない状況なのだぞ!? おまけに相手は神霊! どう考えても撤退を選ぶべき場面だろう!」
ずかずかと師匠に近づくゴルドルフ。咄嗟に間に入ろうとするが、その動きは自分の肩に添えられた師匠の手に制止された。
「命あっての物種だ! 確かに功績は惜しいが、戦略的撤退という言葉も――」
「貴方の言っていることは正しい」
続くゴルドルフの抗議に、師匠の言葉が割り入る。
「その通り。我ら魔術師にとって、もっとも恐れるべきは"死"だ」
「なら――」
「しかし、ミスタ・ムジーク。その死とは、単に生命活動が停止するだけのことを指すものではないでしょう」
授業で講義するように、師匠の言葉に淀みはない。当たり前の事情を講釈するように、言葉は流々と紡がれていく。
「我々にとって忌むべき死とは、根源を目指せなくなるということです。極端な話、自分が死ぬことで後継者が根源に到達できるというのなら、魔術師はそれを選択するべきだ。逆に死ぬ危険性があっても、それを踏破しなければ根源に辿り着けないというのなら、それを躊躇うべきではない」
「なにが言いたい?」
「撤退すれば、我々は確実に"死"にます」
師匠は手を広げて辺りの光景を指し示した。昨晩の襲撃による惨状の痕があちらこちらに見受けられる。
「これまでの調査隊は、遺跡かその道中で襲撃されたと考えられていました。まあ、下手人は昨晩の襲撃者と同じと考えてよいでしょう。神霊相手となれば、魔術師がどれだけ束になろうと敵う筈はない」
それは昨晩の戦いが証明していた。たった一度の交戦で調査隊は半壊。自分とアッドも危うく死にかけている。
「しかし理由は分かりませんが、今回敵はこの村にまでその魔手を伸ばした。既にこの場所自体が殲滅対象とみなされている可能性が高い。もしも我々が撤退すれば、その後、村人は皆殺しにされるでしょう」
「……ま、まあ……しかたあるまい。それに、なぜそれが魔術師としての死とやらに繋がる?」
「問題は村人がいなくなるということです。貴方達も、この村に来るのには"案内人"を使った筈だ」
「……あ」
そうだ。この森には結界があり、村人の案内が無ければ遺跡どころか村にも辿り着けないのである。
ゴルドルフも結界の仕組みについては知っていたのだろう。肯定するように頷くが、すぐに疑問符を浮かべ直した。
「なるほど。村に来れなくなる……調査が出来なくなるということか。だが、それが?」
「その調査が出来なくなるのは誰か、という話です」
「誰って、それは――」
言いかけたゴルドルフの表情が、さあと血の気を失った。見ていて気の毒なくらい青褪め、だらだらと冷や汗をかき始めている。
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