ロード・エルメロイU世の事件簿 case.封印種子テスカトリポカ
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名無しNIPPER
[saga]
2020/09/21(月) 20:22:27.23 ID:amUbMXcr0
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切っ掛けは二週間ほど前に遡る。あの激動の冠位決議の後、スラーの再建が終わり、ようやくかつての日常が戻ってきた頃だった。
いつものようにアパートに呼び出され、師匠が借りている部屋のドアの前で立ち止まる。髪を整える為だ。身だしなみではない。金色に変色した一房が誰の視界にも映らないように、フードの下へ掻きあげるようにして押し込む。
事件の後、自分の身体に残った変貌の証。実をいうと、こっそり染めたり切ったりと色々試しては見たのだが、翌日には必ず元の色・長さに戻ってしまう為、どうしようも無かった。
溜息をひとつ零してから、扉を開く。中からはすでに師匠と、もうひとつ、聞き覚えのある声が響いていた。どうやらライネスが来ているらしい。
自分を呼んだ上でのことだから、聞かれて困る会話でもないだろう。そう判断して声のもとに向かうと、具体的な内容も耳に届き始める。
そこで気づく。今日の師匠とライネスの会話はいつもと立場が入れ替わっていた。ライネスが押し付ける無茶振りに師匠が苦言を呈することが多いのだが、今日は逆のようだ。
「……しかしね、我が兄よ」
奥から響いてくるライネス・エルメロイ・アーチゾルテの声が、具体性を保ったまま、後ろ手に部屋の扉を閉めるこちらへ到達した。
「いささか以上に、性急すぎる選択だと思うがね」
「……座して待っていて好転する状況でもあるまい」
これまたいつも通りの不機嫌そうな表情と声音で、師匠が応じるのが聞こえる。歩みを進め部屋の中を覗き込むと、二人が挟んで向かい合っているテーブルの上には、何枚かの資料らしき書類と大きな地図の様なものが置かれていた。拡大されている為、当時の自分にはそれがどこの地図か分からなかったが。
自分で淹れたのであろう紅茶を不味そうに啜りながら、師匠が続ける。
「私の個人的事情を抜きにしても、だ。これほどまでの"利権を得る権利"が、弱体化したエルメロイ派のもとまで転がり込んでくることなど、そうはないだろう」
「否定はしないよ。しかし逆に言えば、それほどまでの異常事態だということだ。火中の栗に手を突っ込む馬鹿はいない――ここに例外が生まれようとしているわけだが」
ライネスの皮肉っぽい言葉に、師匠はふんと不満そうに鼻を鳴らした。会話が停滞するのを見計らって、その間隙に滑り込む。
「あの……グレイです。遅くなりました」
「やあ、グレイ」
声を掛けると、ライネスがこちらに向かってひらひらと手を振って迎えてくれた。ソファに座る彼女の背後には、いつもの様に水銀メイドであるトリムマウが控えている。
「君からも我が兄上殿に言ってくれないかな? そこまで逼迫した状況でもないのに、死ににいくような真似はよせと」
「お前の持って来た剥離城の案件も、危険度で言えば似たようなものだったが」
「やれやれ、過去のことをネチネチと。まるで小姑のようだ」
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