9:名無しNIPPER[saga]
2020/09/20(日) 13:56:22.05 ID:DMraZkfV0
「それで話を戻しますと。つまり、こんなところで死んでる場合じゃないんです、社さんは。いまさらスケジュールも配役も変更きかないので」
青年にとってそれはありがたい話、のはずだった。しかしなぜだろうか。社にはもはや、モイラの言っていることが極まった社畜の同調圧力にしか聞こえなくなってしまっていた。
「酷ぇハナシだ……」
「え、社さん生き返りたくないんですか?」
「いや、生き返ることそれ自体は非常に助かるお話なので受けさせていただきたいと前向きに検討している所存ではありますが……ディティールが……ねえ?」
「細かいことは気にしない。男の子でしょ?」
「うーん……まあ、分かりました。で、そのリレイズ――生き返り効果を授けてくれるって話なんですが、それが異世界転生とどう関係があるんですか?」
「簡潔に言うとポイント不足。私が直接生き返らせるのではなく、あくまでも社さんが持つ『タレント』の結果としての死の回避にしなければならない以上、私が持つ力ではなく社さん自身の徳が必要になってくる訳です」
「タレント? パッシブスキルみたいなモンですかね。ははあ、なんとなく見えてきましたよ」
ようやく得心がいったとばかりに社は手を叩いた。
「その徳ってヤツを異世界に行って稼いで来いって話ですねクォレハ……」
「そうそう。こっちの世界はその間時間、止めておきますから、これから行く異世界で思う存分善行を積んで転生ポイント貯めてきてください」
「うわ、至れり尽くせりだわ……モイラ様、マジ女神。俺、今日からモイラ様信仰します」
思わず社が取った両手を合わせての拝む姿はオリエンタルが過ぎて、純白の欧風女神の目には奇矯に映った。
「信仰はありがたいのですけれど、せめて手を組むとかで祈って貰えませんか?」
「ははは、だが断る」
調子が戻ってきたな、と女神は表情には出さず内心胸を撫で下ろす。この調子なら大丈夫だろう。この先の一番大切な選択も彼なら、「彼ら」ならきっと間違えないはずだ。
事ここに来て社築はとうとう心からの笑顔を見せ、女神モイラは満足そうに微笑んだのであった。
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