7:名無しNIPPER[saga]
2020/09/20(日) 13:41:08.50 ID:DMraZkfV0
モイラは言う。ごめんなさいと。微笑は崩さずに。人間の生と死は女神にとって日常でしかない。
「そうですか」
「生き返らせられません――私には」
人間の生と死が日常でしかないのならば、奇跡も、取りも直さず恩寵すらもまた女神にとっては日常である。
「だから自力で生き返ってください」
「は?」
あ、俺この笑顔どこかで見たこと有るわ、と。社は記憶を引っ掻き回す。そうだ、アレはラノベ原作の大ヒットアニメだ。無茶を通して道理を引っ込ますヤツだ。
青年の体が小刻みに震えだす。
女神は待ってましたとばかりに神託を授け始めた。
「生き返らせるとなると、その対象にできるのは英雄レベルのカルマの持ち主で無ければいけません」
「カルマ、ですか」
「はい。社さん、貴方は残念ながら英雄ではありません」
英雄、という言葉に同僚の一人を思い出すが青年は頭を振ってそのににやけ顔を振り払った。
女神は続ける。
「しかしながら産まれてくる際の特典として『一回なら死んでも生き返る』っていう、いわゆる九死に一生ですよね。あの手のものならば凡人でもギリギリ手が届く範囲では有るんです」
「なんすか、その『転生ポイント制』みたいなヤツ。初耳なんですけど」
「え? 天界じゃ常識ですよ?」
「知らんし。テイルズじゃないんだからさ……つか、モイラ様? リスタート特典ならもう遅くね? 死んでるんですよね、俺?」
社は首を捻る。知りたくないことをまた一つ知ってしまった。人が生まれながらに平等であるなどと思ったことは一度もないが、しかしせめて真相はオブラートに包み隠してもらいたかったというのが彼の本音である。
「遅いですね。だから、そこは同僚のよしみで因果律に介入し社さんの生前に無理やり捻じ込みます」
「おお……パワー系女神……」
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