【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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◆7m3grp2dM2
[saga]
2020/10/14(水) 18:30:39.03 ID:DA03flOdo
「だがまあ言い得て妙だな。究極的なところ、人も獣も生きるために他を殺しているのは変わらない。そういう意味では違いはないのかもな」
「少し質問を変えるか。お前は自分を人だと思うか?獣だと思うか?」
オレは獣だと答えた。
「では、俺はどうだ?人か?獣か?」
オレは獣だと答えた。
即座に拳が脳天に突き刺さる。
「俺は人か?獣か?」
渋々と人だと答える。
相変わらず理不尽な爺だ。
「そうだ。お前に人非ざる証である竜の角が生えているように、俺にもこうして純粋な人では無い証の四つ耳がある」
爺さんはいつもは髪の毛で隠している顔の側面を露出し人の耳を見せながら、頭の上に生えている狼のような耳を動かして見せる。
「お前が今から一人で街に行けば、化け物が森からやってきたと恐れられ、町の警備をしている騎士やらが追い払いにやって来るだろう」
「だが俺もお前と同じように純粋な人では無いが、この耳を隠さずとも平然と街を歩ける。町の人々も俺を人として扱うだろう」
「何故だか分かるか?」
俺は答えに窮した。
分からないと言えばそれまでだが、理由が分からなかったからだ。
そして何より、理由は分からないのにそうなるだろうという納得があったからだ。
「それが人と獣の違いだ」
「立って歩く姿。ただそれを見ただけで人は人と獣の違いを容易に見分けられる」
「例え俺の顔が丸々犬と挿げ変えられても、立ち振る舞いだけで人だと認められるだろう」
「姿形が問題ではない。もっと根本的な部分で、人は人と獣を区別しているのだよ」
理屈は分からないが、言っていることは分かる。
今までこの森に足を踏み入れてきた人間が、オレを人として扱ったことは一度もなかった。
化け物、怪物、獣。一目見ただけで俺はそう言う生き物なのだと判断される。
だけどこの爺さんは、明らかに純粋な人間ではないにもかかわらず、人だとオレは認識してしまった。
姿形では推し量れない何かが、人という生き物には共通して備わっている。そういうことを言いたいのだろう。
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