【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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266: ◆7m3grp2dM2[saga]
2020/09/24(木) 23:51:24.43 ID:iHo2G7FEo

自然の摂理に則るのなら、そこで話は終わる。
だが、終わらなかった。
そんな絶対の窮地にありながら、その幼子は命を長らえた。

つまりはそう、その命は余りにも――『不自然』な存在だったのだ。

その幼子に近づいた獣は、その牙を柔肌に突き立てるよりも早く、その身が弾け飛んだ。
まるで空気の入った風船に針で穴をあけたかのように、血と肉と骨の詰まったそれが弾けて砕けた。

赤子の鳴き声が大きくなるとともに、草花は枯れ落ち、木々は首を垂れるようにその巨体を横たわらせる。
その赤子の鳴き声に誘われ近寄った獣、その悉く体が弾け命を散らした。
悲鳴を上げるように大地は沈み、やがて赤子は散らした命の海にその身を浴する。
人も獣も、母親の乳を飲み命を繋ぐが、その赤子は獣の血を飲み命を繋いだ。

やがて、その赤子は齢5つにして森の王に君臨する。
親もなく、言葉も知らず、狩りをする知恵すらもない。だがしかし、その森に存在するどんな獣よりも、命を壊す術に長けていた。
何一つ、何者からすらも学びを得ることなく、その怪物は生き延びてしまった。

いつしかその森には『生命を殺す吐息を吐く怪物が居る』そんな噂が流れるようになった。




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