【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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267: ◆7m3grp2dM2[saga]
2020/09/24(木) 23:52:10.77 ID:iHo2G7FEo

そんな森の王であった彼に、唐突な終わりがやってくる。
その森に外から何者かが足を踏み入れてきた。
それだけならば、それほど不思議な話ではない。
縄張りを広げようとする相手の侵略行為であっても、彼はその悉くを破壊し続けていた。
だがしかし、その時来訪した相手は、彼が今まで一度も目にしたことの無い目的を持った相手だった。

「ほう、困った害獣が湧いたと噂を聞きつけて調査にやってきたが、まさかコレが件の怪物か」

立派な顎髭を蓄えた老人が、かの森の王の姿に目を丸くする。
威嚇の唸り声を上げ、敵意をむき出しでにらみつける彼に対し老人はたじろぐ様子はない。

「言葉は分かるか?」

老人は臆せず彼に語り掛ける。
ずっと森の中で暮らし、彼を保護する者もおらず、森に住まう獣を殺して生き延びてきた彼にとって、言語というモノは未知の文化にも等しい。
狼の遠吠えのような雄たけびと共に、彼の踏みしめる大地から波紋を広げるように草木の命が枯れていく。

「成程、人の手には持て余すわけだ。その齢で怪物と呼ばれるだけはあるか」

彼の力の片鱗を目にしても尚、老人は不敵な笑みを崩さない。

「旦那様のご命令は、森に住まう怪物の速やかな排除。………となれば、やることは一つしかあるまいな」

老人は一歩を踏み出す。
命を枯らし、形あるものを地理に帰す魔力を前にしても尚、その力の源へと向けて歩みを止めない。
そんな存在を目にしたのは、彼にとって初めてのことだった。
その老人の姿、未知なる者の不可解な行い、それは正に今まで外敵と呼べる存在と相対したことの無かった、その狭き世界の食物連鎖の頂点に立つ彼に初めて恐怖という感情を与えた。

老人は一歩踏み出す。
彼は一歩退く。

「決めたぞ、小僧。私がお前を『人間』にしてやる」

老人は笑い、手を差し伸べる。
彼は吠え、その手に食らいつかんと飛び上がった。



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