【安価・コンマ】ファンタジーな異世界に異物が紛れ込むお話
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265: ◆7m3grp2dM2[saga]
2020/09/24(木) 23:50:56.09 ID:iHo2G7FEo

『獣と人を隔てるものT』


獅子は兄弟と戯れる中で力の加減を覚え、親と遊び戯れる中で狩りの方法を学ぶのだという。
人は己を世話する人たちの声を聴き言葉を覚え、人の姿を見て学び歩き方を知るのだという。

ならば親兄弟の居ない獣はどうなるのだろう?
周りに人が居ない世界で育った人はどうなるのだろう?

単純な理屈で考えるのならば、狩りもできない社会も知らない獣と人は、生きる術を持たない事と同義だ。
そもそも生まれたばかりの赤子というのは、己一人の力で生きていけるように作られていない。
ともすれば、その末路は容易に想像がつく。

とある世界に一つの国。
広大なその国の領地でありながら人の営みがある場所から遠く離れた、滅多に人が足を踏み入れることがない森。
そんな地に、一人の赤子が産声を上げた。
その命を守る筈の親姿は周囲には無く、ただあるがままにその赤子は大きな声で鳴いていた。
本来なら助けを求める意味を持つそれは、親が近くに居ないその赤子にとっては、外敵を引き寄せるための誘蛾灯になり果てる。
ほんの数分の内に、赤子の周りにはその命を糧とせんとする獣が集う。

生まれたばかりの幼い命が無情にも散る。


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