高垣楓「あなたがいない」
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189: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:32:22.48 ID:17bnaLyc0

 少しだけ落ち着いた私は、祭壇に線香をあげる。仄かな煙が、彼の顔を霞ませる。
 それがいっそう物悲しくて、私は再び涙を流す。ただ、悲しい。
 それでもどうにか涙を拭き、お姉さんへ一礼をする。彼女は「どうぞ」とリビングへ案内した。
 春とはいえまだ寒く、こたつのぬくもりが心地よい。男の子はお姉さんにべったりとくっついて、離れようとしない。

「この子、だいぶ人見知りで。ごめんなさい」
「いえ、とってもかわいらしくて。ねえ、いくつ?」

 私は男の子に尋ねる。彼は母親の後ろからひょこっと顔を出し、手で『三』を示した。

「そう、三歳なんだ。しっかりしてるのね」

 私がそう言うと、彼はまたひょいと顔を隠した。
 お姉さんはお部屋で遊んでらっしゃいと促すけれど、男の子は離れようとしない。そのまま彼女は、男の子を抱っこした。

「お忙しいところわざわざ来ていただいて」
「いえ却って、ご連絡いただきありがとうございます」




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