188: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:31:48.84 ID:17bnaLyc0
「あ……」
私は、言葉を失う。
会いたかった人が、そこにいる。全身が震え、力が抜けそうになる。
「どうぞ、線香をあげてください」
お姉さんに促され、一歩、また一歩、祭壇へ歩む。
あの日、告別式で見たPさんの笑顔。変わらないそれを見て、心がとても締め付けられる。
苦しくて。悲しくて。なぜ。どうして、と。
わけも分からない感情に支配され、私はPさんの祭壇にしゃがみ込む。そして。
「……P、さん」
私はうずくまり、声を殺し、涙を流し続けた。
五分、十分、どのくらい時間が経ったか。私はどうにか、顔を上げる。
すると、お姉さんは傍らで、一緒に涙を流していた。男の子は不思議そうな顔をして、お姉さんの顔を覗き込む。
「だいじょぶ?」
彼は私に大丈夫、と、声をかけてくれた。
「ええ……ええ。大丈夫よ」
私は答える。男の子はまたびゅーっと走って、母親の後ろへ隠れた。
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