高垣楓「あなたがいない」
1- 20
187: ◆eBIiXi2191ZO
2020/09/25(金) 23:31:14.58 ID:17bnaLyc0

「……」

 呼び鈴を押す手が、震える。

 東京から新幹線に乗り、駅からタクシーでしばらく。家に着く。
 Pさんのお姉さんは結婚されていて、旦那さんとお子さんと暮らしていると、電話口で伺った。
 なぜこの時、私に連絡をくれたのか。私がそれを問うことは、叶わなかった。
 それでも心を振り絞り、私はお邪魔する約束を取り付ける。そして。

 閑静な住宅街に、ひとり。
 ぴんぽーん。呼び鈴を押すと、中でぱたぱたという足音が聞こえる。
 がちゃり。中からかわいらしい男の子がひょっこり、顔を出した。

「あら、こんにちは」

 私が挨拶をすると急に恥ずかしくなったのか、ぱたぱたと走って、人の陰に隠れる。その人こそ。

「ようこそ、いらっしゃいました」
「……ありがとうございます」

 Pさんのお姉さん、だった。
 お入りくださいと案内され、リビングに通される。
 続きの和室の客間に、小さな祭壇。そこに鎮座していたのは、Pさんの遺影と、まだ納骨していないであろう骨壺。




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
216Res/171.18 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice