高垣楓「あなたがいない」
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168: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:34:41.65 ID:itU6iUE10

 どきりとする。
 確かに、今の私の気持ちを話せるかと言えば、それは難しい。なぜなら彼女は私の知らない他人、なのだから。

「そう、ですね」
「そうでしょうね。実際、高垣さんのような方は、多いです」
「そうなんですか?」
「はい。うつを患っている方は、ご自身のことをなかなか打ち明けていただけません。致し方ないことだと思います。
いきなり見ず知らずの他人に打ち明けるなんて、普通の人でも難しいですしね」

 カウンセラーさんは一般的な話、と前置きをする。そしてこう言った。

「もし高垣さんがお話ししてもいい、と思われたら、話してください。それでいいんです」
「はあ……なんか、ごめんなさい」
「いえ。それが私の仕事ですから」

 予定されていた時間はとうに過ぎている。それでも彼女は私にこうして付き合ってくれていた。しかし。
 縁が、なかった。私はそう思った。
 確かにこうして話を聞いてもらえることで、心が軽くなる人もいるのだろう。しかし私は、その段階を超えてしまっている、そんな気がする。
 こうして話をしたところで、彼は戻ってこない。
 私には諦念がある。それをどうにかできないうちは、話をしても無駄に思える。

「今日は時間オーバーでお話を聞いていただいて、ありがとうございました」

 私は彼女にお礼を言う。彼女は、私をどう思ったのだろう。

「いえ。もしまたご縁があれば、お話、聞かせてください」

 カウンセラーさんは私に握手を求めた。手のぬくもりが、私を悲しくさせる。
 ご縁があれば。
 その縁はおそらく、繋がっていない。




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