167: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/24(木) 21:34:14.13 ID:itU6iUE10
「さて、高垣さん。こちらに来られた理由を、お伺いしてもいいですか」
「……そうですね。そのために来ましたので」
私は逡巡する。事ここに至って、なにを話せばいいのだろう。そして。
「実は……今『うつ』を患ってまして」
私は、嘘を吐いた。
嘘と言うには少し違うと思うけれど、しかし正確ではないことを、私は言った。
「なるほど」
カウンセラーさんは、メモを取りながら私の話を聞く。
私がところどころ考え、言葉が出なくても、カウンセラーさんはずっと、私の言葉を待つ。時間だけが無碍に過ぎていく、そんな気がした。
ひととおり話を終える、と言っても、自分がうつであることと、今クリニックで治療を受けていること、そのくらいか。
「ありがとうございます。お話は、そこまでですか?」
「え?」
カウンセラーさんは私に言った。
「そうですねえ……なんと言うか、高垣さんがお話されたことは、今現在ご自身が置かれている状況ですよね」
「はい」
「なかなか、お気持ちを話すことは、難しいですか」
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