130: ◆eBIiXi2191ZO[sage saga]
2020/09/22(火) 21:30:45.16 ID:CC20O+KU0
「楓ちゃん、改めて、本当にごめんなさい」
瑞樹さんが私に謝る。はて。
「瑞樹さん、どうして謝るんです?」
それがとても不思議だった。
なにか彼女は、私に謝るようなことをしただろうか。まったく覚えがない。
「あの時」
瑞樹さんの声がわずかに、震えている。
「P君のために、って。言ったこと」
あの時?
ああ、そう言えばそんなこともあった。あれは瑞樹さんと呑みに行った時だったかしら。しかしそれは。
瑞樹さんが、謝るほどのこと、かしら。
私があの時どんな思いだったのか、今この時点で思い出すことができない。それがすべて。
私の感情は今、まったく揺れ動かない。
「いえ、いいんです。謝らないでください」
「そんな謝らないでって……」
瑞樹さんは私の顔を覗き込む。そして顔色を失い、口元を押さえて呟いた。
「……いえ……そう。分かった。今は、言わないわ……」
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