24: ◆.6GznXWe75C2[saga]
2020/09/23(水) 14:00:49.85 ID:XcMjEo+hO
心臓がうるさい。何をこんなに動揺することがあるだろうか。
昔付き合っていた恋人を街中でたまたま見かけた。ただそれだけだ。
別れてから数年ぶりに目にした彼女は、さらにその容姿に磨きがかかっていて、自分と一緒にいた頃よりもより大人びて見えて、単純な距離よりもずっと果てしない遠さを感じさせる。
どうして俺の足は動かないのだろう。
こんな往来のど真ん中で立ち止まっていては、邪魔という他にない。
話しかけることなんて到底できない。だからこの場所に立ち尽くす意味はまるで存在しないのに。
なのに、彼女の姿に釘付けになってしまっている。
どうしてだ?
悔やんで、悔やんで、これ以上ないくらいの後悔を積み重ねて、その末にようやく心の中から追い出すことができたのに。
どうして今日、よりによって平塚先生に会った今日なんだ。
やめてほしい。
俺の心にわだかまる『運命的』なんて反吐が出るような言葉が、どれだけ振払おうにも消えてくれない。
この世界に『運命』なんてない。ただ『事実』の積み重ねによる『結果』しかない。そこに神がかり的な『意味』なんて存在しないのだ。
そんな俺の思考は、彼女の後ろから現れた一人の人物によってようやく、強制的に終了される。
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