14:名無しNIPPER[saga]
2020/09/14(月) 00:08:11.52 ID:RNy0wtmvO
俺が生まれ育った町は、何もなかった。
山と海はある。周りに住む人たちはみんな顔見知りで優しくて、夜になると星が輝いて虫がさざめく町だった。かと言って、漫画に出てくるような過疎地域でもなく、ショッピングモールや娯楽施設もなくはない。
決して嫌いではなかった。むしろ好きだった。
だからこそ、俺はそこを出ることを選んだ。
ずっとここにいると、甘えてしまう気がした。何かを為すにはあまりにも狭い世界だった。
だから俺は勉強をして、どうにかいい大学に入ろうと受験に挑み、今の大学を勝ち取った。合格発表の後は教師に頼まれて後輩に演説もした。
そうやって出てきたこの町で、俺はあまりにも小さな存在だった。
大学の同期は当然優秀なやつばかりだし、サッカーだって高校で見切りをつけてしまった。サークルでフットサルをするくらいでしかない。
田舎から出たら何かが変わる。
それは漠然とした願いでしかなくて、実際は大勢のうちの一人にしかなれていない。
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