【艦これ】鎮守府のいちばん長い日 
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3:名無しNIPPER[sage]
2020/08/23(日) 21:01:18.36 ID:mEhN2ZkD0
 長門はこれまでにない出撃に素直な興奮を覚えていた。

作戦に成功し最終海域突破をしても厳罰はまぬがれない、ただただ甲勲章の誇りを守るために提督を拘束し出撃する。

今回の大規模作戦の甲種褒賞は苦労に見合ったものとは言えない、だがそれでも突破しなければならないと信じていた。

鎮守府に待機する艦娘から燃料と弾薬を抜き取り、間宮と伊良湖に主砲を突きつけ最後の食事を用意させる。

出撃する艦娘は皆無言で食事を口に運んだ、残された時間は少ない、急がねばならない。

長門が自ら旗艦となり連合艦隊が編成され、その出撃を艦娘たちの気のない万歳が見送った。

「甲クリアできても、私たちは解体処分かもね」

二番艦の陸奥がどこかふっきれたような顔でつぶやく。

「鎮守府がこれまで何をしてくれた、七年間も戦い続けていまだに戦争終結も見えない、誇りを失うくらいなら死んだほうがマシだ」

長門の返答に連合艦隊のメンバーがうなづく、終わりの見えない戦いを続けてこられたのも甲種勲章の誇りがあったからだ。

ここで乙や丙に難易度を落とすのは敗北と同じことだ、死ぬ気で全力でぶつかるしかない。

 出撃の様子を医務室の窓から見ていた提督も無事を祈らずにはいられなかった。

信頼していた艦娘に裏切られクーデターをおこされ拘束される、指揮官としてこれ以上はない屈辱である。

それでも長門たちが甲に挑戦する気持ちは理解できた、だが失敗する可能性が高い出撃には我慢がならなかった。

なんとしてでも止めねば、提督の焦燥はつのり時間だけがすぎてゆく。

医務室内を歩き回る提督のコツコツという足音がむなしく響き続けた。

そのうち提督は自身の足音以外の音に気がついた、コツコッコッ、コッコツコツ。

隣の部屋からのモールス信号と気がついた提督はすぐさま返信する。

信号の主はあきつ丸であった、艦娘のクーデターに対し陸軍部隊の投入の是非を尋ねていた。

陸軍部隊を投入すればクーデターが公になり、反乱艦娘の処罰や提督の譴責処分はまぬがれない。

陸軍に対しても大きな借りをつくることになり、今後の予算面での制約も大きくなることが予想された。

だが、提督に他の選択肢はない、一刻も早く指揮権を取り戻し、難易度変更を行うしかなかった。

 陸軍機動連隊が鎮守府に突入すると反乱をおこした艦娘は瞬時に降伏した。

戦意のある艦娘が出撃部隊にまわっていたため、残りの艦娘は惰性でしたがっているだけであった。

反乱をおこした連合艦隊に追撃部隊を差し向けようと主張する大淀に対し、提督は深海棲艦とのホットライン接続を命じた。

ホットライン、それは人類と深海棲艦の間に結ばれた唯一の連絡手段である。

深海棲艦との戦いに人類は全力をつぎこんだ、核兵器、生物兵器、化学兵器。

それは地球を汚染し、人類も深海棲艦も生存を不可能にするのではないかと予想される規模だった。

ギリギリのところで両者の間で話し合いが持たれ、いくつかの兵器は使用が禁止されたが戦争は続いた。

ホットラインはその話し合いのなごりであった。



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