19: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/14(金) 08:35:02.03 ID:QdYqO6ws0
「開発が、始まるそうです」
「……」
なんの、と尋ねることは野暮だった。俺はそこまでぼんくらではなかった。
「開発が始まったあと、どうなるかをわたしは知りません。知りませんが、きっと、そこはわたしの故郷ではなくなるんだと思います。だから」
せめて、その前に。漣は服の袖で目元を拭い、続ける。
「あなたとこの風景を見たかったんです」
その言葉に特別な意味がこめられている、と感じたのは自惚れが過ぎるだろうか。目の前で漣のこんなとびきりの笑顔を見せられとしても?
熱に浮かされていく頭。数度、心臓が強く跳ねる。
そして唐突に、途端に、俺は理解した――観念した、とさえ換言できる。俺がこれまで意地を張ってきた感情の置き所が、あまりにもちっぽけなものに思えてしまったのだ。
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