20: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/14(金) 08:35:57.05 ID:QdYqO6ws0
「俺のくにも、一度ぐちゃぐちゃになっててな」
だから、何の気もない世間話をするかのように、唇から滑り出ていく。
「え」
漣の驚愕。聞いたことない、知らない、とその表情は物語っている。
当たり前だ、一度たりとも教えていないからな。あえてそうしてきた。
「深海棲艦?」
「うんにゃ。3.11だ。八戸の実家で牡蠣の養殖やっててなぁ、そりゃもう、大打撃よ。一時期は首括るかまでいったもんだが、幸い東京の知り合いを頼れてなぁ」
感情の出処を探るのは苦手だった。それでも、やらねばならないことだと、おぼろげながらわかっていた。
俺の漣に抱く感情が、果たして同類を憐れむものから来ているのか、はたまたもっと清らかな……美しいものなのか。
やっとわかった。
気づけば手の中に暖かなものがある。小さな、白い、漣の手。絡み合う互いの指と指。
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