18: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/14(金) 08:34:24.84 ID:QdYqO6ws0
そこでようやく俺の方を向いた。目が合う――視線が、壮絶な過去と、それに裏付けられた強さを伴って、俺の胸を打つ。
漣の話は言ってしまえば田舎によくある、日本中どこにでも見られる話にすぎない。だからといって価値がない、どうでもいいということになるはずもなく。
「どうですか? 海岸線を走る鉄路。駅。街中。品種改良センターと農業機械の工場。水田。畑。畦道。ぼろっちい国道。サイロ。森。山。海。この景色。町の跡。わたしの故郷はこれだけです。有りふれた、大したことのない、ちゃちな風景。歴史。それがわたしの故郷なんです」
漣は故郷に行くと言った。一緒についてきてほしいと言った。それはつまり、今口にしたさまざまなものを俺に見せたかったからということに他ならない。
目の前にいる桃色の、小さくか弱い存在から目を離すことなく、俺は今回の小旅行を振り返った。たとえばそれは、鉄路であったり駅であったり、水田、畑、サイロ、そして眼下に広がる風景であった。
そして何より、目の前の彼女の、驚くべきほどにくるくると変わる表情であったりした。
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