17: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/14(金) 08:32:57.14 ID:QdYqO6ws0
「テレビゲームとかは全然なくって、そもそも町におもちゃ屋がなくって。家で遊んでることはあんまりなかったですね。今? 今は、ほら、反動ですよ。
トンネルが多いんですよ。ほら、海岸のとこ。山を抜いて作った、ああいうのがいくつもあるんです。お化けが出るとかいう噂もあったなぁ。夏が来るたびに肝試ししよう、しようって話してたんですけど、結局一度もやらずじまいでした。
あそこに神社があって、境内で夏と秋にお祭りするんです。御神輿も出ました。わたしは御神輿の上で笛を吹く役目で、それって凄いことなんですよ? このあたりじゃ一番うまかったんですから」
そこで一度指が止まった。僅かに漣は目を細め、一瞬だけ悲痛が顔を彩るけれど、俺が彼女を抱きしめようとするよりも、彼女が平静を装うほうが早い。
「なんにもない町でした」
述懐。田舎にありがちな景色の、記憶の。
「でも、いまは本当になんにもない」
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