5: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/11(火) 23:24:34.21 ID:AVuudPRF0
右手に持っていたアイスキャンディはその殆どが溶けていて、根元の方に少し残っているだけだ。細く白い指先を水色の液体が濡らしている。
イクが差し出してきたそれを、何のためらいもなく口に運ぶ。そのまま人差し指を舌先でくすぐった。イクは僅かに体を震えさせたが、それが身動ぎなのか身震いなのかはわからない。
アイスの棒が机に落ちる。しかし今の俺には代わりがあった。爪の感触を確かめたり、関節を僅かに噛んだり……感じるいたずらの共犯者めいた昂揚。
ゆっくり、遅々とした、蝸牛のような鈍さで指を口から引き抜いていく。
重なり合った左手は汗ばんでぬめる。左手同士でうまくかみ合わないのを構いもせず、俺たちは強く手を握った。あるいは、だからこそ、強く。
暑いのもたまには悪くない。
《おわり》
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